事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

テロ等準備罪(共謀罪)『不成立』で一般国民が損?ETIAS等への影響

パレルモ条約とETIAS、ESTAの関係

共謀罪不成立だと、テロやスパイ行為がやりたい放題じゃないか!

このような指摘もありますが、ここではそれとは異なった視点から共謀罪不成立による一般国民の不利益について書きます。

※注意:これは確定した事実ではなく、私の推測です。ただし、関係する情報を総合したそれなりの合理性のある推測だと思っています。

渡邉哲也氏の指摘

テロ準備罪を含む国際的なテロ規制を満たせない場合、日本人のノービザ渡航が出来なくなり、ESTA(米国ノービザとその関係国)とETIAS(欧州とその関係国)への入国が制限(国際合意で2020年をめど) 企業の輸出や資金調達にもペナルティ(多くが倒産)

まず、テロ準備罪は、国際組織犯罪防止条約(通称パレルモ条約)を締結するために成立を要するという状況にあります。よって、国際組織犯罪防止条約=パレルモ条約とETIAS、ESTAの関係について調べる必要があります。

残念ながらETIAS、ESTA と国際組織犯罪防止条約の締結の関係については、直接的な資料は見つけられませんでした。私の調査能力不足なのですが、哲也さんに直接聞くわけにもいきません。

ただ、ETIASの仕組みを調べていくうちに、確かに哲也さんの指摘の通りになる可能性が高いと思いました。国際社会の動きというのは連動しているので、犯罪取り締まりに対する国際社会の取り組みを総合して判断する必要がありますが、今日はそこまでのことはしません。

ETIASとは

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ETIAS:エティアス=欧州渡航情報認証制度

ビザが免除されている日本やアメリカなどの国民が、シェンゲン協定国であるヨーロッパの一部の国に(ドイツ、イタリア、フランスなど26ヶ国)にビザを取得せず訪問するために必要な欧州渡航情報認証制度。

ETIAS EU VISA – European Travel Information and Authorisation System – European Travel Information and Authorisation System

現在日本は、シェンゲン領域国との二国間合意によって、短期滞在のビザを免除されているという状況です。これが、2020年からETIASへの申請が必要になるということです。(ビザ申請はこれまでと同様に不要)

整理すると

  • 現在日本人はシェンゲン協定国へビザ申請なしで渡航可能
  • 2020年からはETIASの申請が必要。ただ、ビザ免除は変わらず。
    ※ビザ免除対象の渡航目的は旅行やビジネス、通過目的(トランジット)に限られる
  • しかし、テロ等準備罪不成立だと国際組織犯罪防止条約=パレルモ条約が締結できなくなり、ETIAS対象国から外れる可能性が高い。すると、ビザ申請が必要になる。
    ※シェンゲン協定国のビザを既に取得している方はETIASへの申請は不要

申請のコストは?

  • 申請はオンライン上で10分程度
    ※渡航前の72時間前に申請を終わらせる必要があり
  • 費用は申請料5ユーロ
    ※決済手段はクレジットカード決済のみとなります 18歳未満の未成年者は不要
  • 渡航許可は5年間有効
    ※パスポートの有効期限が5年以内の場合はパスポートの有効期限内までが有効期限となります。

一般人にとって、特に大きな負担ということにはなりませんね。
そして、決済がクレジットのみという意味は、「信用が無い人はお断り」ということですね。これは通常の一般人には関係ありません。
反社会的勢力や多重債務者、無資力者が難民化して流入するのを防ぐ効果が期待されます。申請料などは、そのためのコストと考えれば安いもんですよ。

ビザ申請しなければならない場合は?

各国で異なるため、ビザ免除対象国ではないエジプトの短期滞在の例で見ていきましょう*1

  • 入国ビザは、事前に在日エジプト大使館で取得する又はカイロ空港等到着時に取得(滞在許可1か月、手数料25米ドル)必要があります
  • 申請から発行までは、概ね5営業日(業務日)が相場
    これは多くの査証関連サイトから得た感触
  • 手数料は25米ドル=その時点でのレート次第。大体3000円弱

日本がETIASに登録できなかったら、欧州への渡航もこのような感じになる可能性があるということですね。これは面倒ですわ。

しかも、ビザ申請はとても面倒なので、業者が申請代行をやっています。業者のサイトを見ると、この場合の報酬は数万円かかる(長期滞在とか特殊滞在は10万円以上)ようなので、ビザ申請は一般国民にとって相当な負担ですね。

テロ等準備罪(共謀罪)不成立ならETIASから排除されるという可能性はどこから?

何度もいいますが、確定的な情報は得られていません。

しかし、上記でETIASについてみてきたように、クレジットカード決済に限定されるなど、信用のならない者を排除する仕組みであることが分かります。

そして、HPにはこう書いてあります。

このリスト(注:ETIAS対象国リスト)は日々変更される可能性があり、最新のETIAS対象国を含むものではない

今後も継続して日本がビザ免除対象国とされるかがわからないということです。

国際組織犯罪防止条約を未締結の日本が排除される可能性は高いと予想されます。

だって、そうですよね?
マフィアやテロ組織の人員が、日本で共謀・準備行為をした上で自国に入国してくるかもしれないのですから、そんな国から来る輩にやすやすとビザを発給するのは恐ろしくてたまりません。 

国際組織犯罪防止条約を未締結の国連加盟国

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イラン、ブータン、南スーダン、コンゴ、ソマリア、パプアニューギニア、日本、パラオ、ソロモン諸島、ツバル、フィジー

この中に日本がいる違和感。。。

北朝鮮ですら国際組織犯罪防止条約を締結しているということに驚きです。
国家を解体しますってことでしょうか?いや、何でもありません。

ただし、「共謀罪が成立している」といっても、共謀の合意の時点で犯罪が成立するという意味での共謀罪を定めている国は厳密には異なります。

結語:意味不明な反対論に惑わされないように 

現在、法律家の組織あるいは個人ブログ等で、テロ等準備罪についての誤解を広める発信が大々的に展開されています。

その批判のいくつかは正当なものがありますが、中には法律家であればわかるはずの明らかな誤りが含まれている場合があります。
パレルモ条約の条文に書いてある事すら無視し、誤解して発信していることもあります。

それは

【テロ等準備罪=共謀罪は危険である】

ということを前提に論理を組み立てているからです。

そのような情報に惑わされないためには

【そういうことが良くあるのだ】

という視点を持つことです。

何も、法律についての専門的な知識を持つ必要はありません。もちろん、テロ等準備罪が「正しい」「おかしい」という意見もそれ自体は正しいのです。要は、明らかにおかしな反対論や賛成論には与してはいけないということです。

政治的妥協の産物の匂いがしますから、おかしい部分は確かにあると私も思いますよ。

私も、明らかな誤りを含む情報発信の片棒を担がないように気を付けていきます。