事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

女系天皇容認論者撃退マニュアル1天照大神(アマテラス)が皇祖神だから女系でOK?

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御在所岳 山上公園 © 菰野町 Licenced under CC BY 4.0

天照大神(アマテラスオオミカミ)は皇祖神です。

女系天皇とは 

女系天皇とは 

【母のみが皇統(天皇の血統)に属する天皇】 

【父親が皇統に属さない天皇】

という定義が一般的です。
※一般的、というのは、女系天皇容認論者は異なる定義の可能性があるからです。 

ここを出発点に、いわゆる男系論者と女系論者の理解の違いを解説していきます。

谷田川惣さんの著作である「皇統は万世一系である」を基本書として 皇統譜なども参照できる図を掲載していきます。

「皇統」という語の定義

男系論者と女系論者の理解の違いを知る その前提として、最初に用語の意味の説明から入ります。なぜなら、皇統の問題は、用語の定義から議論が食い違う可能性があるため、この話を避けては通れないからです。

さて、「皇統」とは、天皇の皇位継承が代々なされてきた系統のこと

いいかえれば 

「初代の神武天皇(じんむてんのう)から皇位継承されてきた系統」 

といえます。 

「天皇」というのは神武天皇(男)が初代であり、そこから代々、

【父親の尊属(祖先)を辿っていくと、神武天皇を祖先に持つ者】 

この者が天皇になっていきました。

皇位継承において「男系」と言われるのは、このような系譜を有する者を意味します。

ここが議論の出発点ですが、女系天皇論者の中には、この理解からして異なる、という理論があるので注意すべきです。 

「女系天皇」の定義とは

繰り返しになりますが「女系天皇」とは、

【母のみが皇統(天皇の血統)に属する天皇】を指す呼称です。 

【父親が皇統に属さない天皇】という言い方でも良いです。

注意すべきは、「女系天皇」という語は、元々存在しなかった語ということです。 

なぜなら、男系継承で皇統を保ってきたのが天皇だからです。

いちいち「男系」という修飾語をつける必要はありません。それが基本形だからです。

「女天皇」とは?「女天皇」と何が違うの?

「女天皇」は、読んで字のごとく、性別が女性の天皇です。 

例えば、現行の皇室典範では認められていませんが、愛子内親王殿下が皇位継承すれば、殿下は女性天皇と言えます。しかし、女系天皇ではありません。

父君である皇太子徳仁親王は、今上天皇、昭和天皇という皇統に属する祖先をもつからです。

女系天皇とどう違うのかというと

  • 天皇は性別のみで呼び方が決まる
  • 天皇は父方の祖先が皇統に属するか否かで呼び方が決まる

このように言えます。

天照大神(アマテラス)は女神だから女系OKという誤解

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雨晴海岸 © 高岡市観光交流課  Licenced under CC BY 4.0


天照大神(アマテラスオオミカミ、以下アマテラス)は、言わずも知れた女性神です。 

皇祖神であり、日本人の総氏神です。 

歴史上の人物という説もありますが、神話の世界の人物という説が支配的です。 

初代天皇である神武天皇は、アマテラスの子孫です。

よって、皇室は女系継承では?というと完全に違います!

谷田川惣(やたがわおさむ)氏の「皇統は万世一系である」98ページを引用します。

読むのが面倒な人は引用の下のざっくりとしたまとめを参照ください。

※彼自身はフリーライターですが、本書は皇学館大学の神道学教授である新田均先生が冒頭にてお墨付きを与えています。
※引用ではブログ主が読みやすいように漢字を省いたりしています。

 神様に血の論理が適用できるのかという基本的な問題を確認しておかなければならない。血統における男系・女系というのは、父親、母親があっての話である。 

イザナキとイザナミにより天照大神が生まれたというのは有名な話しであるが、「日本書記」によれば日本の島々をつくりだした”国生み”は夫婦神として行われているが、天照大神やスサノオなどの三神については、夫婦神の子としない別伝が記されている。

「古事記」では、天照大神など三神はイザナキの目や鼻から生まれたと記されている。「古事記」、「日本書記」のどちらの記述でも、天照大御神とスサノオは単身で神々を生み出している。

これらについて男系もしくは女系などと論じることには意味があるのか、疑問である。

つまり、アマテラスやスサノオの親はイザナキ(男)のみであったということ
※「イザナキ」は、「イザナギ、イザナミ」のイザナギことです。読み方が若干違いますが、同じ人物を指します。

また、アマテラス自身は子を産むために夫がいたわけではなかったということ

現在でこそ女神として描かれているアマテラスですが、男神として描かれているものもあるようであり*1、もしかしたら最も古いニューカマー(死語)なのかもしれませんね。
もはやわけわかんないですね

天照大神(アマテラス)に連なる系譜

こちらの図が参考になります。人物に当てられる漢字が様々ですが

イザナキ=伊邪那岐神

スサノオ=須佐之男命

この理解でよいです。

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出典:Wikipedia*2

神武天皇まで、イザナキという男神の系統でつながっていますね。
まぁ、こんな考え方はしないものですけれども

そして、 皇統は万世一系であるの99ページの次の記述も重要です

はじめて男系か女系かを選択できる余地があるのは、アメノオシミミノミコトの次の世代、つまり三世からとなる。

そこで、次に後継者となったのが男性神のニニギであったということが重要で、だからこそ「天孫」の意味は大きいということだ。神話のなかで「天孫降臨」が重要な位置を占めるのは、ここにあるのだと考えている。

以後、一貫して皇祖神を男系により継承していく。これが日本は神話から一貫して男系継承であるということであり、「日本独自の男系継承」があったことの証明となるのだ。

アメノオシホミミノミコト」って何?という方。 

アマテラスの息子です。「天忍穂耳尊」という漢字があてられることもあります。

ニニギ」というのは上記の図で言う「天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命
長いので「邇邇芸命」でOK.

ニニギの親には男神と女神がいるので、初めて男系と女系という区別が可能になる、ということですね。 

天孫降臨の顛末:天照大神ではなく孫の邇邇芸命が統治

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曽爾高原 © iku  Licenced under CC BY 4.0


アマテラス「葦原の中つ国(日本)も平定したし、アメノホシオミミ、統治しなさい」

アメ「ニニギが生まれたのでそいつに任せるわ」

アマテラス「えぇ…じゃあニニギよろしく!」

ニニギ「わかりましたー」

こうして「天孫降臨」と相成ったのであった。

※ホントにこんな感じです!

まぁ、つまり、アマテラスも、アメノオシホミミも、日本を直接統治していたのではないということ。 

日本統治を始めたのはアマテラスの孫のニニギから! 

普通はアメノオシホミミが初代として権勢を振るいそうなものですが、そうしなかったということで、日本神話って奥深いですねぇ。

日本の皇室は神話の時代から一貫して男系継承である

女系天皇容認論者が、「皇統」という語を神話の時代にまであてはめたとしても、「女系継承も認められていた」というのは誤りであると言い切れます。 

女系天皇容認派の全てが、アマテラスが女性だから女系継承だ、と言っているわけではありませんが、少なくともそのような理解は誤りだということになります。

また、「アマテラスが~」という理論に立っている者が、現実の制度を参照して、女系継承が認められる制度だったのだから、女系天皇には正当性がある、という主張をしても、それは矛盾です。

神話を根拠にすることと、現実の制度を根拠にすることは、両立しません。

さて、なんでイザナギが皇祖神じゃないの?

という疑問はありますが、脇に置くとします。 

イザナギ、イザナミよりも前の世代が気になったので、天地開闢まで調べてみました。

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出典:Wikipedia*3

なんか、ラスボス感漂いますね。久しぶりに「大神」やりたくなってきましたよ。

まとめ:皇室・皇統の議論はこの理解を出発点に

以上、ここまでの理解が正統な皇統の理解です。

この知識を持ったうえで、女系天皇容認派の論理を見ていけば、その論理がいかに一般的な理解とかけはなれているか、矛盾が生じるのかがわかります。

以下では高森明勅やその影響を受けた小林よしのりの理論について検証しています。 

以上